三途

兎に角逃げなければ…という一心で車を走らせた

どこをどう走ったのかも分からなかったが

気がつくと河原に居た

こんな場所は今まで来たことない

辺り一面

色とりどりの美しい花が咲き乱れている

ここはどこだろう？

思いながらも恐怖から逃れられたことに安堵する

よく分からないが川の対岸に人がいる気がした

目を凝らしても顔も形もはっきりしない

見えるのはただ人の形をした黒い影たち

大勢いる

そしてみんなこっちに向かって手招きをしている

声も無く

待って…

そちらへ行こうと一歩踏み出す

その時

ポケットの携帯が地面に落ち

光を放ちながら鳴っていた

はっと我に返る

見ると人影も美しい花もそこには無く



もうあと一歩踏み出していれば

大きな川の中に身を投げていたところだった



とあの人は語った






人気ブログランキングへ