余興

昇るしかなくて

昇りつめたら

堕ちるしかなくても

進むしかない

屠殺の順番を待つ牛のように

知っている運命を変えられない

見えなければ幸せなのかもしれない

幸せなまま堕ちて行けるのかも

それとも

予知ははずれて

翼が与えられるというのか

神の余興で

傷

怪我をした

しようと思ってした訳じゃなく

気付いたら既にもう痛かった

放っておけば治るだろうと

こういうのは触らないのがいいのだと

そういう時に限って

傷口が何処かにぶつかる

痛みを思い出すだけでなく

クローズアップされる傷口

傷の出来た原因まで

フラッシュバックされる記憶

決して忘れさせるもんかと

自己主張する



アナタを癒す為には

目を背けてはいけなかったのだ

見つめて向き合って痛かったねって

優しくそっと

手を当ててあげれば良かったんだ

声

あなたの声を聞くと
不思議に元気が出た

半端ない孤独感から
解放された気になる

例え解決しなくても
軽くなることもある

とりあえず暫くの間
効き目があればいい

幸せなことだと思う

水底

誰も
苦しみは無い方が
いいに決まっているけれど

落ちてみなければ
分からないことが
確かにある

メッセージは
とっくに発せられてた筈なのに
それに気づけなかった愚かな自分が見える

溺れている時には
周りなどまるで見えない
見えるのはただ深くて暗い水底だけ

苦しいのは自分ばかりと
救いを求め
しがみついた誰かが
自分以上に苦しんでいると分からなかった

そんなことすら

自分も苦しみの中にありながら
手を差しのべてくれた人たちを
守れるくらい強くなりたいと願う

今度は自分が

咎

あの時

もうあのままでは居られなかった
決定権は与えられず
だから黙って従った
運命に

投与された中毒性の強い薬は
逃げ出さぬように
殺さぬように
蝕んでいった

刹那に満たされる為に
心に嘘をつき
自分を差し出し
ぽっかりあいた傷口から
目を背けた

罪の重さにだけは
耐えられなかったから
痛みで埋めようとした
誰かの傷を
ヒトの痛みを代われる筈もないのに

今になっても
時折襲いかかる痛みは
背負わなければならない
私の咎